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東京高等裁判所 昭和48年(ラ)508号 決定

抗告人 多田ルイ

相手方 登喜和自動車販売株式会社 外一名

主文

原決定を取消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

抗告人は、主文同旨の決定を求め、その理由として、「本件申立債権は、自動車売買残代金三四四、〇〇〇円及びこれに対する昭和四七年八月二一日(期限の利益を喪失した日の翌日)から支払ずみまで日歩九銭八厘の割合による遅延損害金債権であるところ、抗告人は、相手方たる債権者に対し、昭和四八年七月一〇日、右金員(但し遅延損害金については同日までの分)計金四五三、一八八円に本件強制執行費用金一〇二、五〇〇円を副え、合計金五五五、六八八円を弁済のため提供したが、その受領を拒絶せられたので、同日これを供託した。よつて主文同旨の決定を求める。」として、右供託書を提出した。

ところで、金銭債権に基く不動産に対する強制競売手続において、その競落許可決定の確定前に弁済ないし弁済供託がなされ、その証書が抗告裁判所に提出された場合の取扱については説の分れるところであるが、当裁判所は、民事訴訟法第六八一条第二項、第六七二条第一号後段、及び第六八二条第三項、第六七四条(特に第二項但書)、並びに第五五〇条第四号の法意に徴し、抗告裁判所は、右弁済証書ないしこれに準ずべき供託書について審理のうえ、これを真正と認めるときは、原許可決定を取消し且つ当該競落の不許を宣言するのが相当と考える(尤も最終的には、当該競売申立の取下、更には請求異議の訴による執行力の全面的排除を要することはいうまでもない)。

これを本件についてみると、本件記録によれば、抗告人主張の事実(供託書の成立の真正を含む)を認めることができるから、本件抗告は理由があり、よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 西岡悌次 青山達 小谷卓男)

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